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産業医の解決事例の紹介〜休職者による社内での誹謗中傷と休復職対応〜

執筆者の写真: 垂水良介垂水良介

更新日:3 日前

産業医による休復職に関する解決事例紹介
産業医による休復職に関する解決事例紹介

COCORO GROUP株式会社の垂水良介です。今回は、弊社による解決事例の紹介です。内容は個人情報の観点から変更・脚色され、架空症例となっておりますが、実際の産業医による休復職の対応や、法的リスクのイメージについて説明させていただくことが趣旨となっています。企業様が産業医に依頼をする際のご参考になれば幸いです。


 
人材派遣会社で働くBさん
人材派遣会社で働くBさん

<会社>A株式会社 200人規模

<業種>人材派遣会社

<休職者>Bさん 男性 40歳

<経過>X年4月からA株式会社で一時的な繁忙期となり、Aさんの残業時間が増加。ある日、Bさんが不眠、抑うつ気分、食欲低下があり、Bさんの仕事のミスを上司が厳しく指導した。その後、Bさんは社内で、指導を受けた上司に対する激しい誹謗中傷を行い、その誹謗中傷を確認した従業員が人事課に相談、社内で共有された。その後、心療内科に通院していたBさんは主治医から休職診断書が発行され、休職を開始した。その直後から産業医面談開始。Bさんは心療内科を受診し、少量の抗うつ薬で治療を開始し、産業医面談では焦燥しきった様子であった。また休職前に、「周囲に悪口を言われている」と他の従業員に相談をしていたことも判明し、そのことを産業医面談では詳しく聴取した。会社は誹謗中傷を行ったBさんを懲戒処分とした。Bさんの症状は徐々に改善し、誹謗中傷したことを反省し、主治医の許可の上でリワークに通所した。Bさんの誹謗中傷と「悪口を言われている」といった発言を会社側は重く受け止め、「重症度の高い精神疾患ではないか」と懸念し、将来的な職場復帰に対して大きな疑念を示した。

休職者の同意を得た上で、人事課職員と産業医が本人の医療機関の受診に付き添い、主治医に対して、復帰可能性及び病名に関する意見を確認した。本人は復職を熱望し、主治医は復帰可能見込みの判断であった。会社側は本人の職場復帰に対しては、休職期間の後半まで非常に慎重な態度を示していた。Bさんのリワークの通所や復職支援プログラムの結果、産業医は復職可能と意見を会社に提出し、会社は復職を決定した。その後、復職後もしばらく産業医面談を継続し、安定労務が可能となっていることを確認し、産業医面談は終了となった。Bさんは、数年間経過するも再発なく働いている。


今回のポイント


  • 産業保健と、労務管理を区別しながら対応する

  • 産業医は、①Bさん、②会社側、③主治医と円滑で豊富なコミュニケーションを取り、連携や事実確認、不安の軽減や調和をはかる

  • リワークの通所や復職支援プログラムを通して、客観的な休職事由の消滅や業務遂行性を確認する

  • 会社側は慎重かつ深刻な結果を想定するが、産業医としてミスリードを防ぐための試みをいくつも行う。傷病者に対する業務起因性の確認、会社側へのメンタルヘルス不調の対応方法や理解を深める、主治医の病名や判断を補足する、客観的な根拠や事実を蓄積・説明する

    まとめ

無事、Bさんの復職が成立し、現在、症状再発せず、労務問題も生じずに元気に働かれています。Bさんは元々高い能力(語学力と資格)を持っており、他の従業員よりも生産性が高く、真面目に働き、会社に継続的な利益をもたらしています。適応障害と聞くと、「うつ病の一歩手前」「軽度」といったイメージを持つ方も多いかと思いますが、働く人がストレス状態に陥った際の精神症状というのは、個人差があります。一般の方にとっては、被害妄想など重い精神疾患を連想するメンタルヘルス不調者の発言や、激しい易怒性は受け入れ難いものでありますが、適応障害で生じる可能性はあると考えています。本事例の復職が成立しなかった場合自然退職となり、Bさんは地位確認請求することが予想できます。一般的には休職事由が改善した場合は、会社側はすみやかに復職をさせる必要があり、会社側の判断で休職事由を変更し、休職を延長させることは基本的にできません。一方で会社側は、他の従業員の安全配慮義務も負っているため、周囲に影響度の高い休職者の復職には慎重となることは理解できます。本事例とは別の事例ですが、適応障害で休職した従業員の心身が回復しても、「コミュニケーションが取れない」という理由で会社側が復職を拒むケースがありました。産業医としては休復職の制度の理解と法的なリスクを意識して、企業様に積極的なご助言させていただきます。

長くはなりましたが、ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。




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